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VIDEO-ITを取り巻く市場と技術

2008年3月6日掲載

第27回 広がりをみせるH.264アプリケーション

(月刊ニューメディア2008年2月号 掲載記事)

■オンデマンドTV
IPTVでもHDではH.264が使われる。さまざまな観点で地デジ相当の帯域をとることが厳しいことも理由の一つだ。オンデマンドTVは、Bフレッツを利用した家庭向けIP放送&VOD配信サービス。2006年3月からハイビジョンのビデオオンデマンド映像配信の試験サービスを開始した。同年7月から商用化されている。HD映像はH.264 1080i 8Mbpsで音声はAAC、多重化はMPEG-2 TSを使っている。

■NGNでの映像配信
2008年春からサービスが始まるNGNでも、映像配信にはH.264が使われる模様だ。フィールドトライアルでは12Mbpsと高めのビットレートが使われていた。
この他、さまざまなIPTVサービスで、これからHD化が進むが、ほぼすべてのサービスでH.264が使われると考えて良い。

■アクトビラビデオ
アクトビラビデオは、インターネット経由でテレビにビデオオンデマンド配信するサービスだ。2007年9月から無償配信サービスを開始しており、同年11月から有償配信もスタートした。松下電器産業がプラズマテレビ内にSTB(セットトップボックス)機能を内蔵したモデルを発売しており、光接続の家庭であれば、テレビをブロードバンドルーターにLAN接続するだけで、ハイビジョン映像の受信再生ができる。サービスは、デジタルテレビ情報化研究会仕様に基づいており、この仕様を満たした機器であれば、このサービスを利用することができる。ソニーから外付け型のSTBが発売されているが、今後、各メーカーから対応したテレビやSTBが続々登場しそうだ。アクトビラビデオでは、HD映像にはH.264 Highプロファイルが使われており、音声はAAC、多重化はMPEG-2 TSだ。

ブース
写真:InterBEE 2007でのIBEブース。左端のモニターで流れている映像はH.264形式のもの。

■Flashビデオ
PC向け映像配信で存在感が非常に大きいFlashビデオだが、これまでは独自の映像圧縮技術(SorensonやON2社VP6)が使われていた。ところが、Adobe社は2007年8月にH.264対応を発表した。アナウンスによると、iPod向けのH.264ファイルなど幅広いH.264ファイルが再生できるようにする、とのこと。当然、HD映像配信もターゲットとなっている。映像圧縮は、H.264 Baseline/Main/Highプロファイル。音声はHE-AACや従来のAAC-LC、多重化はMP4が使われる。FlashビデオのH.264対応によって、PC向けの映像配信でもH.264が使われる事例が今後急速に増えていくと考えられる。

■AVCHDカメラ
AVCHDは、コンシューマ用テープレスビデオカメラの規格だ。メモリカードや光ディスクなどに記録する。HD解像度(1080i)に対応しており、ビデオはH.264の5〜12Mbps程度が使われる、音声はDolby、外部システムとのやりとり時の多重化にはMPEG-2 TSが使われている。現在では、HDVより対応メーカーが多いくらいで、今後さらに普及が進みそうだ。DVよりH.264の方が、エンコーダLSIの違いによる画質の差が大きく、モデルチェンジが進むにつれて、画質も改善されていくと考えられる。(AVCHDに限らず重要なことは、従来のMPEG-2ビデオやH.264の場合、画質の改善はエンコーダ側の工夫によるもので、デコーダは従来のものがそのまま使える、という点だ。)

■家庭用ハードディスクレコーダ
TV放送を録画するための家庭用ハードディスクレコーダだが、ハードディスクや光ディスクへの録画時間を稼ぐために、HD放送のMPEG-2映像をよりビットレートの低いH.264にエンコードして記録するモデルが松下電器やソニーから発売された。Blu-layディスクに記録する方式はAVCRECと呼ばれている。詳細は公開されていないが、H.264のHighプロファイルにまで対応したもので、TV放送を録画するために、暗号化手法が規定されている。民生用の安価なLSIでエンコードが必要なため、いろいろ制約がある。ただし、数が出るマーケットのため、開発が進んでくる。ここしばらくは、各社の画質競争が続くと考えられる。

■デジカメ
デジカメの動画撮影機能でも、H.264を使った製品がカシオや三洋電機から発売されている。三洋電機の製品にはHD解像度に対応したものもある。三洋電機の製品の場合、多重化にはMP4、H.264はMainプロファイル、音声はAACが使われている。デジカメに内蔵できるエンコーダLSIの能力の関係で、画質という点ではH.264のフル性能ではない。カシオの場合、多重化にQuickTimeが使われている。PC上で再生する場合の互換性を重視したようだ。

これまでにあげたサービス・製品群以外でも、PC用のテレビ録画機能やコンシューマ向けの映像伝送でH.264が使われだしている。後者の代表例には、ソニーのロケーションフリーがある。
このように、広がりが出てきたH.264の応用分野を俯瞰すると、対応サービスや対応製品の相乗効果でH.264が使われる比率の増え方がより加速しているように思う。

(株式会社アイ・ビー・イーでは、オンデマンドTVやアクトビラビデオ、携帯電話用など各種映像配信サービス向けのH.264エンコーダと関連ソフトウェア・設備を提供している。)

 

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※編集の関係上、雑誌掲載内容と少し異なる個所があります。

(コラム記事/ (株)アイ・ビー・イー 先端システム研究所 竹松昇)

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