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VIDEO-ITを取り巻く市場と技術

2007年12月13日掲載

第9回 FTTH型CATVの開発 前編

 

■概要
1993年頃から家庭のブロードバンドネットワークが話題になり始めました。ISDNはほぼ浸透しましたが、せいぜい数百Kbpsが限界です。近い将来を見通すとやはりメガオーダーの安価なネットワークが必要になるだろうと考えられるようになりました。方式は光、ADSL、CATV、無線など様々で専門家の間で白熱した議論が繰り返されました。しかし当時未だインターネットは商用化されていませんでしたので、IP(Internet Protocol)ベースの議論は一般的にはそれほど浸透していませんでした。

 NTTは光の普及に力を入れていました。ISDNの次は一気に光にするという意気込みで、米国などで話題になり始めていたADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)には重点を置いていませんでした。主な理由は電話との干渉で雑音が発生する恐れがあると考えられたからです。国も京阪奈を中心にBBCC(新世代通信網実験協議会)やPNES(新世代通信網利用高度化協会)を発足させブロードバンドの実証実験を開始していました。
その頃米国でもタイムワーナーがフロリダのオーランド市に次世代型ケーブルテレビの実験システムFSN(Full Service Network)を導入することに決定した、とのニュースが入り話題をさらいました。米国はCATVの普及率が高く(約6割)、事業者の勢力が強く通信事業者よりブロードバンドには熱心な面もありました。一方AT&Tなど通信事業者はADSLを次世代のブロードバンドの主力にしようと開発に力を入れていました。
このような状況下、日立は将来のブロードバンドネットワーク時代に向けて新たな事業創造を目指した社長直属の社内ベンチャー組織を作ることになりました。ブロードバンドと言っても直近の商売がないとやりにくいだろうということで、一応“CATV”を当面の題材としながら将来を見通すことになり、組織は1994年4月に発足し、名称は「CATVシステム推進本部」となりました。10人弱のチームが作られ私は部長として組織を引っ張ることになりました。組織発足と同時に私含め5人はただちに米国のシリコンバレーに飛び、数ヶ月滞在し米国のブロードバンドネットワークの最新状況を調査しました。
日本に戻り米国の状況も含め関係者で今後の推進方法を議論しました。CATV網は幹線に光を使い加入者に近い部分に同軸ケーブルを使うHFC(Hybrid Fiber Coax)方式が主流になっていました。

      
図1:HFC(Hybrid Fiber Coax)方式のCATV

同軸ケーブルは再送信には都合のいいツールであり工事も容易で安価だが、双方向になると“流合雑音”(注1)の問題が発生し、また将来の高速広帯域には限界があるのではないかという意見が専門家からも出ていました。
注1:ケーブルの接続部などから雑音が混入しセンターで合流する現象

これら同軸ケーブルの問題を解決しかつ日本の技術ポテンシャルを考えた場合、敢えて光を全面に使ったFTTH(Fiber To The Home)をベースにしたCATVにチャレンジしてみようということになりました。

      
図2:FTTH(Fiber To The Home)方式のCATV

ハードルの高い挑戦であることはチームの全員うすうす理解していましたが、結束し乗り切ってみようということになり、早速集中してFTTHの技術調査、事業化検討を行いました。

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(コラム記事/ (株)アイ・ビー・イー 坂井 裕)

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