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VIDEO-ITを取り巻く市場と技術

2007年11月1日掲載

第7回 世界最小TV電話の開発 前編

1980年代後半、CCITT(現ITU)で画像コーデックの標準化作業が進むと、毎日のように画像コーデックの話題が新聞雑誌を賑わせるようになりました。中でも圧縮率の話題が注目を集め、各社とも必死になって低ビットレートの画像コーデックの開発に力を入れていました。ちょうど数年前、音声コーデックも同じような状況がありましたが、画像は1.5Mbpsから始まって768Kbps−>512Kbps−>384Kbps−>256Kbps−>128Kbpsへと早いペースで低ビット化が進んでいきました。しかし低ビットレートの見通しは立ってきたものの、商用で例えばTV会議などに使うにはやはり768Kbpsぐらいの画質がないと実用に耐えられないという意見も多く出ていました。この場合回線は専用線を使うことになるため料金は高くなり、どうしてもビジネスユースに限定されることになります。

一方ISDNも広く普及してきたので、「画像コーデックの低ビットレート化が進み、もし64Kbpsでも送られるようになったとしたら、ISDN回線一本で音声・画像が同時に送られるようになり回線料金も安くすむようになる」という、まさにTV電話の実用化の話題が現実味を帯びて来るようになってきました。「TV会議は企業が金をかけて設備するので画像が綺麗でないとだめだが、TV電話なら多少画像が悪くても許されるのではないか、その代わり安くないとだめだろう」と考えられていました。

ちょうどその時ある幹部から「パーソナル向けTV電話の開発をやってみたらどうか」との意見が出され、私はその検討チームのリーダに指名されました。1989年5月、私は通信、家電、半導体、デザインの各部門から若手を集め検討チームを発足させました。まず始めに"TV会議システムをどこまで小さくできるか"というテーマで検討のアプローチを開始しました。しかし当時TV会議は1セット1,000万円以上し、制御装置は基板で10枚以上あり、これを小さくするだけではTV電話にはならないだろうという結論に達し、発想の転換が必要になりました。そこで次に"電話にTVを付ける"というアプローチを試みることにしました。まず目標を"多機能電話にTVが付いたもので製品価格約10万円"と設定し、検討を再開しました。できるだけ余計な機能やインタフェースは外し、限りなく単純、簡素に仕上げることを最優先にしました。

約2ヶ月間集中的に検討した結果、技術的目処が立ってきました。画像コーデックは専用LSIとDSPを活用し、ISDNインタフェースにマルチメディア処理を行なう専用LSIを活用すれば回路はA4版基板一枚で実現出来る見通しが立ちました。

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(コラム記事/ (株)アイ・ビー・イー 坂井 裕)

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