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VIDEO-ITを取り巻く市場と技術

2007年8月9日掲載

第4回 倉本聰とネットワーク

 今日は技術の話はしません。脚本家で有名な倉本聰さんがあるエッセイで書かれていた内容をご紹介します。文章はもうここにありませんので内容の正確性はご容赦ください。私の脚色も入っているかもしれません。

さて皆さんご存知のように倉本さんは北海道富良野に住まいを持ち創作活動をしています。随分前の話ですが、当時富良野の自宅には電話しかなく東京の出版社と通信するには電話でのやり取りが中心だったそうです。原稿が出来上がると通常は郵送をしていたのですが、期限が迫って時間がなくなるとわざわざ車を飛ばし千歳空港まで持って行き、飛行機便に託したそうです。飛行機の出発時間を気にしながら片道約2時間車を飛ばすのはけっこう辛かったようですが、執筆時間が稼げるのですっかり日常になってしまったそうです。

しばらくして富良野の倉本家にも通信ネットワークが充実しやっとFAXがつながるようになったそうです。倉本さんは早速原稿をFAXで東京に送り始め、つくづく便利な物だと感心したそうです。「もうこれでわざわざ車を飛ばして千歳空港に行くめんどうもなくなった」と実感したそうです。次々と仕事ははかどり快適な生活を送れるようになったそうです。

ある日、倉本さんは外の景色を見ていて何か自分の中で忘れ物をしたような実感にとらわれたそうです。よく考えてみると、「季節の移り変わりを敏感に感じ取ることができなくなっている」ことがその原因であることがわかったそうです。以前はしょっちゅう千歳空港まで車の往復をやっていたので、気がつかないままにその日その日の季節の移り変わりを直接目にしていました。春はラベンダーなど花が綺麗に咲く風景、冬は大雪に見舞われ吹雪で立ち往生するなどの厳しい季節、秋は色あざやかに染まった紅葉の風景など四季折々の風景を運転しながら眺めていました。しかしFAXを導入することによりすっかり出かけることも少なくなり風景を眺めることもなくなってしまったのです。

 


写真.富良野の風景


倉本聰さんのこの話は、便利な手段(=ネットワーク)により今まで享受していた喜びとか楽しさが奪われる例だと思います。よく考えると我々の日常生活には似たような例が数多くあります。時にはわざと不便な手段を選び普段体験しないようなことを経験してみるのも面白いかもしれません。

(コラム記事/ (株)アイ・ビー・イー 坂井 裕)

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