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2005年4月号掲載

第27回 ダウンロード販売を支えるデジタル著作権管理技術「DRM」

米国で人気の「iTunes Music Store」や携帯電話向け音楽配信により、デジタルコンテンツのダウンロードによる販売が一般化してきた。このように映像や音楽などのデジタルコンテンツを販売する際には、著作権を保護するためのデジタル著作権管理技術「DRM」が必要だ。今回はDRMの仕組みを典型的な例を元に解説しよう。

DRM(Digital Rights Management)は、音楽や映像などのデジタルコンテンツを、権利を持つ人のみが視聴できるようにする技術だ。実現のためには権利を譲渡/販売する仕組みと、権利を持つ者のみがコンテンツを再生できる仕組みが必要となる。DRMではデジタルコンテンツを暗号化し、使用権を持つ人に暗号を解読するための「鍵」を渡す。暗号技術を使い、使用権の内容が第三者に渡ったり、改変されたりできないようにする。

使用権とは、コンテンツをダウンロードしたPCでの再生や、携帯プレーヤーへのコピーができる権利を指す。旬を過ぎると価格を下げたり、最初の45秒は無料で視聴できるが、その後は有料にするなど、さまざまなビジネスモデルが考えられる。

DRMのルーツの1つに、1983年に筑波大学(当時)の森亮一教授が提唱した「超流通」がある。コンテンツを自由にコピーできるようにして、視聴した分だけ料金を支払う考え方だ。NECのPC-9800シリーズが登場したころで、当時としてはかなり先進的な考え方だった。

その後、DRM技術は高い価値を持つ技術として評価されるようになった。DRMに関する多くの特許を持つ米InterTrustは、2002年にソニーとオランダPhillipsに4.5億ドルで買収された。そのInterTrustがMicrosoftをDRM特許の侵害で訴えた訴訟では、Microsoftの支払った和解金が4.4億ドルに達した。

■暗号鍵と許諾条件を合わせてライセンス情報とする

図1はDRMを使ったデジタルコンテンツの配信/視聴の基本パターンだ。デジタルコンテンツは暗号化され、PCなどの再生端末に配信される。DRMのポイントは、この暗号化に使った暗号鍵情報と、使用権に合わせた許諾条件の情報をセットにして、ライセンス情報として取り扱う点にある。再生端末(PCの再生ソフトなど)は再生時に、暗号を復号する鍵を取得するためにサーバに対してライセンス情報の発行を要求する。サーバでは、再生端末から送られてきたコンテンツのID番号や、ユーザー情報を確認し、ライセンスデータベースに格納されているライセンス情報を送り返す。再生端末は、ライセンス情報に含まれる鍵情報を使い、デジタルコンテンツの暗号を復号する。改変を防ぐために、ライセンス情報には改変すると壊れてしまう証明用の暗号情報を付加しておく。Windows MediaのDRMの場合、インターネットにつながっていない環境でも、ダウンロードしたコンテンツを再生可能にするため、ローカルハードディスク上の隠しファイル内にもライセンス情報を保管するようになっている。

■新しいDRM技術のトレンドは携帯プレーヤーへの対応

Microsoftが2004年5月に発表した「Windows Media DRM 10」では、許諾条件のバリエーションが強化された。定額会員制や時間単位のレンタルサービスなどに加え、携帯プレイヤーなどの非PCデバイスでも直接サーバと通信してライセンス情報を取得できるようになった。このように、DRMでは携帯プレーヤー用の機能が重要になってきている。

携帯プレーヤーにおけるDRMの考え方の例を図2にまとめた。DRMに対応するデバイスやメモリーカードは固有の番号を持っており、この番号を暗号鍵の1つとして暗号化する。こうすることで、暗号化に使った携帯プレーヤーやメモリーカード以外では暗号を解読できない、つまり再生できないことになる。SDカードの場合、SDカードと機器間でお互いに相手が正規なものかどうかを認証する手順を踏んで、より破られにくい仕組みにしている。

携帯プレーヤーの代表格であるiPodには「FairPlay」と呼ばれるDRM機能が存在する。米国で先行しているiPod用のダウンロード販売サービス「iTunes Music Store」で利用されている。FairPlayの人気の理由は許諾条件がゆるやかなことによるユーザー利便性の高さだ。購入した音楽コンンテンツを、そのPCに登録したiPodにコピーして再生できるほか、購入したコンテンツを最大5台のPCで再生でき、最大7枚のオーディオCDを作成できる。

FairPlayの詳細な仕組みは非公開だが、上記の条件や、実際の動作から推定すると、図3のような機能分担になっていると考えられる。iTunes Music Storeで音楽ファイルを購入すると購入情報がストアのサーバ上に残る。最大で5台分のPCで暗号を復号するためのユーザー鍵情報を取得でき、その音楽コンテンツを再生できる。PCからiPodにダウンロードする場合、ユーザー鍵情報を併せてダウンロードする。

FairPlayの対象となるAACファイルは拡張子がm4pで、前号で解説したMP4形式のファイルフォーマットが採用されている。iTunes Music Storeからダウンロードする時点で、MP4ファイルのヘッダの一部に、ユーザー情報が格納される。併せて暗号鍵情報の一部も格納するようだ。ユーザー鍵情報と組み合わせて初めて暗号化されたAACデータを再生できることになる。

●デジタル著作権管理の基本的な仕組み

図1 DRMにおける、デジタルコンテンツの暗号化と、鍵、権利情報の関係の例。サーバでは暗号鍵と許諾条件をライセンス情報として格納しておく。再生時にこのライセンス情報を取得し、暗号データを復号する。

●携帯プレーヤーやメモリーカードへの書き込みと再生

図2 メモリーカード内蔵の鍵を暗号鍵の一部とすることで、他の環境にコピーした場合、再生できなくする。
メモリーカード側には鍵を置くための特別な領域を用意する。

●iTunes+iPodのDRM「FairPlay」

図3 iTunes Music Storeを通じて購入した楽曲は独自のDRM技術「FairPlay」で保護されているが、その詳細は非公開だ。図は表面的な動作から類推される動作の仕組みの概略。コンテンツ鍵をユーザー鍵で暗号化して、暗号化されたAACと合わせてMP4ファイル内に格納するようだ。

 

(文/ 竹松 昇、(株)朋栄アイ・ビー・イー) ※編集の関係上、雑誌掲載内容と少し異なる個所があります。

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