私とマルチメディアVIDEO-ITを取り巻く市場と技術MXFラボ

TOP
TOP > MPEGラボ > 第23回

WinPCLabs Webの動画を速く、きれいに!“コーデック”

2004年12月号掲載

第23回
Microsoftが標準規格化を目指す「Windows Media Video 9」の仕組み

Microsoftが年内の承認を目指して全米映画テレビジョン技術者協会に提案している「VC1コーデック」。これはPCユーザーになじみ深いWindows Media Video 9(WMV9)を標準規格にしようというものだ。Windows Media Player 10で新しいVC1の機能が利用可能となる。今回はこのWMV9の仕組みをひも解きつつ、VC1の内容についても解説する。

2004年10月、次世代の大容量光ディスク規格「HD DVD」と「Blu-ray Disc」に、Microsoftの「Windows Media Video 9」に基づくビデオ圧縮技術の「VC1」が採用された。報道ではよく耳にするVC1だが、Windows Media Video 9との関係はどうなっているのだろうか。最近明らかになったWindows Media Video 9の技術内容を踏まえて、両者の関係を解説しよう。

■WMV9を標準化団体に提案してVC1が誕生した

Microsoftが2003年1月に発表したWindows Media 9シリーズは、プレーヤーソフトの「Windows Media Player」(図1)だけでなく、ビデオ圧縮、オーディオ圧縮、「DRM(Digital Rights Management)」などさまざまな技術を統合した製品群だ。その中で、ビデオ圧縮技術はWindows Media Video 9(以下WMV9)と呼ばれている。WMV9は、1994年12月に発表された「Microsoft MPEG-4 V1」以来、「MPEG-4 V2」「MPEG-4 V3」「Windows Media Video V7」「Windows Media V8」と進化してきたMicrosoftのビデオ圧縮技術の集大成だ。これらは、当初はMPEG-4 Video規格に相当する圧縮方式だったが、Windows Media Video V7で大きく手が加えられ、新しい圧縮方式と呼べるものになった。

Microsoftは2003年9月、SMPTE (Society of Motion Picture and Television Engineers:全米映画テレビジョン技術者協会)にWMV9を圧縮技術標準の1つとして申請した。SMPTEは、映画/放送設備のための規格を策定している団体だ。MicrosoftはWMV9の技術的内容を公開することで、標準技術として認知させ、ゆくゆくは映画/放送業界で本格的に採用されることを狙ったものと考えられる。

SMPTEに提案されたWMV9は、当初「VC9」と呼ばれていた。標準化の過程で呼び方が変更され、現在は「VC1」と呼ばれている。SMPTE標準の中に業務用のデジタルVTRテープの規格があるが、これはD1、D2、D3・・・と順に番号がついている。ちなみに民生用DVカムコーダーに使われているDV圧縮はD7という番号だ。WMV9のような、コンピューター向けのビデオ圧縮技術にも、VC1、VC2と順次番号が付与されると考えられる。

MPEGのビデオ圧縮規格と同様、VC1において標準として規定されるのはデコード(再生)の方法のみ。エンコード(圧縮)の方法は規定していない。つまり、エンコードの方法は自由で、Microsoft自身が持つエンコードのノウハウは隠されたままである。

ただし、デコード方式が公開されたことで、特許への抵触を別とすれば、他社でもエンコーダを開発できるようになった。今後はハードウェアエンコーダの開発も活発化すると考えられる。WMV9は、H.264と比較するとエンコード時のCPU負荷が小さいが、HD解像度でリアルタイムエンコードしようとすると、やはりハードウェアのエンコーダが必要になるからだ。

なお、VC1で規定されるのは、あくまでビデオの圧縮技術の部分だけだ。オーディオの圧縮技術や、システムと呼ばれるビデオとオーディオの多重化技術については今回のSMPTEでの標準化の対象外となっている。つまり、VC1では、音声圧縮にWindows Media Audio 9が使われるとは限らず、VC1とDolby Digitalを組み合わせて、MPEG-2 TS(Transport Stream)に載せて使ったりすることもあるわけだ。実際に、米国のデジタル放送規格を決めている組織ATSC(Advanced Television Systems Committee)は、MPEG-2 TSにVC1を載せた規格(MPEG-2 System規格の拡張)の策定を進めている。

SMPTEでの標準化の過程で、VC1には新たにインタレース映像に特化したエンコード機能が追加された。家庭用テレビを出力デバイスとする場合、インタレース映像への対応が課題となる。このため、インタレース対応機能が追加されたが、従来のPC用のWMV9と異なるため、従来の「Main Profile」に対して「Advanced Profile」と呼んで、区別している。(表1)

VC1とWMV9の関係だが、標準化されようとしているビデオ圧縮技術VC1に対し、それを実装した製品の1つがWMV9ということになる。MicrosoftはVC1に加わった新しいプロファイルへの対応を進めている。図1で紹介したWindows Media Player 10をインストールすると、新しいプロファイルがインストールされる。

■H.264/AVCと似て非なるWMV9のエンコード

さて、業界標準を目指す動きに伴って、2004年春、これまでベールにつつまれていたWMV9技術の中身の主要部分が公開された。図2のWMV9エンコーダのブロック図とMPEG-4の新しい圧縮技術であるH.264/AVCのエンコーダのブロック図を比較してみると、かなり似ていることが分かる。

どちらも画像を「マクロブロック」と呼ぶ正方形の領域に区切り、圧縮の単位とする。このマクロブロックの各画素を直交変換と量子化処理で、周波数成分、つまり粗い画像成分と細かい画像成分に分け、ビットが不足する場合に細かい画像成分を落とす。また、フレーム間の類似性を利用して圧縮率を高める動き予測、動き補償処理など、仕組みの大枠は同じだ。

しかし、細かい点が異なる。例えば、直交変換の処理単位の考え方だ。H.264/AVCは直交変換の処理単位が4×4ピクセルが基本だが、WMV9では、4×4ピクセル、4×8ピクセル、8×4ピクセル、8×8ピクセルの4種類となっている。エンコーダが最適なサイズを自動選択する。また、動き予測と動き補償の処理も異なる。H.264/AVCで特徴的な、マクロブロックの分割処理は、WMV9では少し違う形で単純化されている。デブロックフィルタについても、少し異なっている。
WMV9とH.264/AVCは、ほぼ同じ時期に開発された。H.264/AVCは、画質向上に有効なあらゆる手を尽くすという考え方で設計されている。WMV9は現状のPCのパフォーマンスを踏まえ、なるべく処理負荷を増やさずに画質を向上させるべく、さまざまな工夫を凝らしたものと言える。

図1 最新版の「Windows Media Player 10」(英語版)、日本語版も近々正式に発表される見込みだ。

プロファイル名称 用 途 実 装
VC1 Simple Profile 低ビットレートのインターネットストリーミング、携帯電話、PDAなどでの動画視聴。複雑度の低い方式である。 Windows Media Video 9
VC1 Main Profile 高ビットレートでのインターネットストリーミング、PCでのコンテンツ再生。 Windows Media Video 9
VC1 Advanced Profile テレビのコンテンツ再生用。インタレース映像を取り扱えるのが特徴。MPEG-2 TSフォーマットに載せることも可能だ。 Windows Media Video 9 Advanced Profile

表1 VC1圧縮方式で規定されているプロファイルと、Windows Mediaの関係を表にまとめた。
新たに加わった「Advanced Profile」は、PCにWindows Media Player 10をインストールすると、同時にインストールされる。

●WMV9エンコーダの基本構造

●H.264/AVCエンコーダの基本構造

図2 WMV9エンコーダとH.264/AVCエンコーダの基本構造をブロック図化した。上図はMicrosoftの技術論文「ベールを脱ぐWMV9、H.264/AVCとはここが違う(上)」(日経エレクトロニクス2004年3月29日号掲載)より。下図は比較のために用語をそろえてある。基本の構造要素が比較的にていることが分かる。

 

(文/ 竹松 昇、(株)朋栄アイ・ビー・イー) ※編集の関係上、雑誌掲載内容と少し異なる個所があります。

このテーマを製品化すると Multi Video Processor Pro
Internet Video Processor Publish Edition
製品・システム・技術に関するお問い合わせ