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WinPCLabs Webの動画を速く、きれいに!“コーデック”

2003年11月号掲載

第17回 市民権を得たDivXエンコーダ最新版5.1では何が変わったか?

高圧縮率のビデオ圧縮技術を解説。その第2弾は「DivX」を取り上げる。コーデックが無料で入手できるうえ、高画質な点が評価されて人気急上昇。カノープスが製品に採用したことで完全に市民権を得た。 ただ、高い知名度を誇るわりにはその仕組みが正しく理解されていない。今回はDivXの背景や技術的な特徴、AVIファイルとDivXファイルの関係などについて解説する。

「DivX」は米DivXNetworksのビデオ圧縮技術だ。現在広く使われている「DivX Version 5」は、MPEG-4ビデオ規格を使ったソフトウェアコーデック(エンコーダ、デコーダ)。圧縮率が高いわりに画質が良い、コーデックが無償で入手できるといった理由で、一気にメジャーコーデックとなった。最近ではカノープスがTVキャプチャーボード「MTV3000FX」などで採用、ビデオ圧縮の世界で完全に市民権を得たといえる。DivXは、MPEG-4ビデオに準拠しているため、MPEG-4のライセンス対象となる。通常の使い方では問題ないが、DivXを使って有償配信する場合はライセンス使用料への考慮が必要だ。

現在の最新バージョンは、2003年9月2日に発表された「Ver.5.1」だ。DivXNetworksが運営する「DivX.com」からダウンロードできる。エンコード時の設定が直感的で簡単なものになり、バグ(主にマイナーな規格違反)も改修されている。また、エンコード中のエンコーダ内部の処理内容をビジュアルに見ることができる画面が付け加えられた。

画質面でも、若干向上させる新機能が加わった。例えばDivXの設定ダイアログに「Bidirectional Encoding」と表現されている機能がある。これは「B-VOP」という前後のフレームとの差分を圧縮する手法で、全体の圧縮率をさらに上げられる。このほかにもパンのように画面全体が移動する映像を効率良く圧縮する「GMC(Global Motion Compensation)」、微妙な絵の動きを把握して効率良い圧縮に利用できる「Quarter Pel」などがある。

こうした新機能はMPEG-4ビデオ規格の中でも後発の規格である「Advanced Simple Profile(ASP)」に基づくものだ。これらはデコーダによっては対応していないため、エンコード時に個別にON/OFFできるようになっている。

■DivXは開発当初からMPEG-4に準拠していた

DivXはもともと個人のプロジェクトとして開発されたビデオ圧縮技術だ。開発当初のDivXは、AVIファイル形式でビデオファイルを作成したいというニーズを満たすために開発された。初期のWindows Mediaで使われていた「MS MPEG-4」と呼ばれたMicrosoft製MPEG-4ビデオコーデックを使って、AVIファイルを作成するものだった。

しかし、MS MPEG-4が3つめのバージョンである「V3」になったとき、AVIファイル作成に使えなくなってしまった。Microsoftが今後サポートするファイルフォーマットをASF(拡張子WMV、WMA)にしたことから、AVIファイルでは使えなくしたようだ。このころのDivX Ver.3は、MS MPEG-4 V3のコードを一部含んでいるという噂で評判を落とした。

その後、2000年にDivXNetworksが設立され、オープンソース方式でMPEG-4ビデオ圧縮ができる全く新しいソフトウェアを開発しようというプロジェクトがスタートした。その成果物であったDivX Ver.4が現在のDivXの原型だ。

コーデックが完全にオリジナルとなった現在でも、DivXの圧縮結果のデータは、MPEG-4ビデオ規格に準拠している。前回解説したXVDは独自の圧縮技術だが、DivXの特徴は国際規格であるMPEG-4ビデオに従いつつ、高画質を実現している点が特徴だ。

MPEG-4に準拠するメリットの1つに、再生できる環境の広がりがある。最近、DivXファイルを再生できるDVDプレーヤーがいくつも発売されている。DivXで使われているレベルのMPEG-4を再生できるLSIは既に何種類もある。あとは後に述べるファイルフォーマットや音声圧縮方式に対応するだけで再生が可能になるため、開発コストが安く済むわけだ。

■AVIファイルは入れ物 中身はMPEG-4とMP3

通常、DivXで圧縮したビデオファイルはAVIファイル形式で作成する。これは、冒頭で述べたように、もともとAVIファイル用のMPEG-4ビデオコーデックという成り立ちからきている。AVIならば各種ソフトで扱えるメリットもあるし、DivX開発当初、MPEG-4のファイルフォーマットが確定していなかったことも理由に挙げられるだろう。

もともとAVIファイルなどのファイル形式は、ビデオとオーディオを1本のファイル上で混在させるために使うフォーマットだ。動画の再生にはビデオとオーディオを同時に読み出す必要がある。このため、ビデオデータ、オーディオデータを細かく分割し、交互に配置して順に読み出す仕組みが要る。実際、AVIファイル形式では、ヘッダ情報の後ろにビデオとオーディオのデータが交互に延々と並べられ、最後にデータを管理するインデックス情報が配置されている。

AVIファイル形式では、さまざまなビデオとオーディオの圧縮技術が選択できる。その1つがDivXというわけだ。DivXのほかにもDVコーデックがAVIファイル上でよく使われる。DivXはビデオ専用の圧縮技術であり、オーディオの圧縮はほかの技術を使う。多くの例ではMP3を使っているが、ほかの音声圧縮技術と組み合わせることも可能だ。

従って、AVIファイルを再生するためには、AVIファイルに格納されているビデオやオーディオそれぞれのコーデックソフトが必要になる。ソフト紹介などで、「AVIファイルが再生できる」という表現があるが、これは厳密には正しくない。どんなコーデックが使われるか分からないファイルを必ず再生できるはずなどないからだ。「DivXのAVIファイルが再生できる」と言うのが正確であり、親切な説明だ。

図1 「DivX PRO5.1」の設定画面。ビットレートや画質に関する圧縮時のさまざまな設定が可能になっている。


 

(文/ 竹松 昇、(株)朋栄アイ・ビー・イー) ※編集の関係上、雑誌掲載内容と少し異なる個所があります。

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