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WinPCLabs Webの動画を速く、きれいに!“コーデック”

2003年10月号掲載

第16回 新登場の動画圧縮方式XVDの仕組みを解き明かす

最近、高圧縮率のビデオ圧縮技術がいろいろ発表されている。この連載ではこれらの圧縮技術に焦点を当てて、どのようなものか、特徴は何かなどを解説したい。

第1回目は注目の新コーデック「XVD」にスポットを当ててみよう。アイ・オー・データ機器から登場したハードエンコードボードを使い、圧縮の仕組みを検証する。

XVD(エックス・ブイ・ディー)は、「eXtended-play Video Disc」の略で、独自フォーマットのビデオ/オーディオの圧縮技術だ。開発元は米DigitalStream USA(以下、DS-USA)というベンチャー企業。有名なDVDソフトプレーヤーソフト「Cinemaster」を開発したRavisent Technologiesの中心メンバーが独立してRightbitsを創業、2002年にDS-USAとなった。

日本からはCD/DVDライティングソフトで知られるビー・エイチ・エーが資本参加。アイ・オー・データ機器もXVDのハードウェア圧縮ボードを発売している。

XVDはビデオとオーディオそれぞれを独自の技術で圧縮する。Rightbitsが開発したコーデック「Bigbits」(ビデオ)と「MUZIP2」(オーディオ)が基になっており、どちらも軽快な動作が特徴だ。

XVDのビデオコーデックは、携帯電話の動画撮影クラスの解像度(94×64ピクセル)から、HDTV解像度(1920×1080ピクセル)まで幅広く対応している。現在バージョンでは352×240〜720×480ピクセルが利用可能。VGA解像度相当のビデオ映像を、700Kbps〜3Mbps程度のビットレートで圧縮するのが標準的な使い方だ。エンコード環境はソフトウェア、ハードウェアの両方を用意。デコード(再生)は今のところソフトウェアだけだが、ハードウェアも計画中だ。

XVDのオーディオコーデック機能は、32k、48k、64kbpsといった3種類のビットレートをサポートしており、次バージョンでは128kbps以上にも対応する予定だ。

■XVDのビデオ圧縮のカギはウェーブレット圧縮か?

XVDのビデオ圧縮技術の内容は公開されていないが、その高い圧縮率から、従来のMPEGとは異なる技術を採用していると考えられる。そこで、圧縮の難しい映像をエンコードして、圧縮方法を推測した。
まず気が付くのは、通常のMPEGに見られる8×8ピクセル単位の「ブロック歪み」が見えないことだ。ただし、モスキートノイズと呼ばれるもやもや状のノイズは見える。これらの特徴から、JPEG2000の中核技術として採用された「ウェーブレット圧縮」を使っている可能性がある。

ウェーブレット圧縮は、従来のMPEG圧縮の基本技術の1つである「DCT(離散コサイン変換)」と異なる圧縮技術だ。DCTでは8×8ピクセルのブロック単位で圧縮するのに対し、ウェーブレット圧縮はより大きな範囲、例えば画像全体を対象として圧縮をかける。

ウェーブレット圧縮の場合もDCTと同様に、高周波成分つまり画像上の細かな変化を省略することで情報量を減らし圧縮する。しかし、画像全体を対象とするため、ビットレートを減らした際のブロック歪みのような画質劣化が起こらない。低いビットレートでも、より自然な圧縮画像が得られるのが特徴だ。ただし、画像全体を圧縮するため、その分計算処理に時間がかかる。

ウェーブレット圧縮はMPEG-4でも採用されているが、こちらは静止画だけで動画には使っていない。ウェーブレット圧縮を採用したJPEG2000を動画に拡張した「Motion JPEG2000」と呼ばれる規格も策定されている。ただ、Motion JPEG2000の場合、各フレームが独立しているので編集が容易だが、圧縮率は高くできない。

●XVDをエンコードするパラメーターからの推測

このほか、XVDのエンコードパラメーター設定(図1,2)から推測できる、XVDビデオ圧縮の内容をいくつか紹介する。

図1 GV-XVD/PCに付属する「XVD Compressor」の、映像オプション設定画面。XVD圧縮に関する各種の設定ができる。
図2 GV-XVD/PCには録画ソフト「XVD Recorder」も付属。こちらの録画パラメーター指定では、2パスエンコードやデインタレースなどいくつかの項目がなくなるが、それでも豊富なパラ メーターの指定が可能だ。

・Multi-Pass Encoding
図1の一番上にあるこのオプションでは、いわゆる「2パスエンコーディング」が選択できる。手法としてはDVD-VideoやDivXまたWindows Media Videoなどと全く同じだ。1回目で入力映像を解析し、動きの激しいところや複雑な画像に重点的にビット量を割り振り、2回目で実際に圧縮する。 非リアルタイム変換の場合にしか使えない点もほかのビデオ圧縮技術と同じだ。ソースから直接録画する「XDV Recorder」(図2)では、このオプションが選べなくなる。

・De-interlace
このオプションは、インタレース(飛び越し走査)映像として作成されたビデオ映像をPC画面などで見た際に、エッジが縦方向にギザギザになってしまう問題を回避する。選択肢を見る限り、これもほかのビデオ圧縮技術と大差はない。

・Prefer Motion
このオプションは、「スキップフレーム」と呼ばれる圧縮方法の一種だ。圧縮が難しい複雑な、もしくは動きの激しい映像の場合、2フレーム分のビットを使って1フレームを圧縮することで画質を向上させる。画質は上がるがフレーム数が減るため動きのスムーズさは減る。

・ビットレート分配設定
動きが激しい映像と緩やかな映像に割り当てるビットを変更するパラメーター。Hi Motion側に設定すると、動きが激しい映像に割り当てるビット量を多くし、動きが緩やかな映像に割り当てるビット量を減らす。MPEG-2などではCBR(固定ビットレート)とVBR(可変ビットレート)の2種類しか設定できないが、XVDではCBRとVBRの間を自由に調整できるようだ。

・最大キーフレーム間隔
キーフレームの間隔を設定する。最小12、最大300となっており、単位はフレーム数と考えられる。この間隔があまり長いと、キーフレームなしでは復元できない圧縮ノイズが蓄積され、画質が劣化する。一報、短くしすぎるとデータ量が増えてしまう。なお、このパラメーターから、前述のMotion JPEG2000ではできないフレーム間の相関を利用した圧縮していることがうかがえる。

以上のエンコードパラメーターから考えると、単に圧縮率を向上させるだけでなく、人間の見た目にきれいに見えるような工夫、エンコード設定ができることが分かる。XVDの場合、1種類のパラメーターですべての映像を美しくエンコードすることはできないため、映像の内容に合わせてパラメーターを変更する必要がある。

 

(文/ 竹松 昇、(株)朋栄アイ・ビー・イー) ※編集の関係上、雑誌掲載内容と少し異なる個所があります。
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