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WinPCLabs これでわかった!動画の秘密“MPEG”

2002年9月号掲載

第14回 Windows Mediaが大きく変わる次期バージョン「9 series」の全貌

2001年末にMicrosoftはWindows Mediaの次期バージョン"9 series"の開発を発表した。今のところ9 seriesの全貌は明らかになっていないが、配信能力が各段に上がるなどの大規模な機能向上が見込まれている。ここでは、6月に発表された新情報を元にユーザーの得られる利点も含め9 seriesとは何なのかを解説する。

"Corona(コロナ)"の開発コードで呼ばれていた、Microsoftが開発中のWindows Mediaの次期バージョン"9 series"では、構成ソフトウェアのほとんどが新しくなる。具体的にはデジタル著作権管理機能(DRM)以外、つまり配信サーバ、プレーヤー、エンコーダ、SDKすべてがバージョンアップされる。中でもサーバの機能強化が一番大きな拡張だ。プレーヤー、エンコーダも新しくなるが、コーデック(ビデオ/オーディオの圧縮/伸長技術)以外はまだ発表されていない。

■サーバの開発コードは"Hercules(ヘラクレス)"

9 seriesの配信サーバは「.NET Server」(Windows 2000 Serverの後継OS)に含まれる形で出荷される。出荷は今年末の見通し。プレーヤーなどサーバ以外の機能は、一足早くリリースされる模様だ。ユーザーは従来通り、無償でダウンロードできる。

現在使われているWindows Mediaの配信サーバ(Windows Media Service)は、Windows Mediaのバージョンで言うとVer.4.1相当となる。Windows NT4.0時代に開発されたもので、今となってはかなり古い。Windows Mediaのサーバチームは、それ以来ずっと新バージョン開発を続けてきた。これが9 seriesの配信サーバだ。開発コードネーム「Hercules(ヘラクレス)」の名前のとおり、かなりパワフルな内容となっている。

9 seriesの配信サーバは、バージョンアップというより、新たに開発されたものだ。従来は、ユニキャストサービス、マルチキャストサービス、制御サービス、ログサービスの4つのプログラムが動いていた。今回はこれらが1つになった。このためサービス間の連携を取る必要がなくなり、現状のベータ版でも従来のWindows Media配信サーバの1.5倍のストリームを同じハードウェアで配信できる。製品版ではこの性能はさらに向上する予定だ。

拡張性について見ると、プラグインソフトにより、多様な機能拡張が容易にできる構造となっている。配信サーバの機能の多くはプラグインソフトの形となる。新しく開発したものと置き換えられるので非常に自由度が高い。

配信サーバは図2のように、8種類のプラグインの切り口を持つ。プラグインを差し替えることで、例えば、配信プロトコルですら差し替えることができるわけだ。

■強力な配信サーバはユーザーにどんなメリットをもたらすか

配信サーバの主な新機能を説明しよう。

(1)ファスト・スタート
9 seriesの新機能の中では、比較的分かりやすく、よく紹介されているものだ。プレーヤーで再生をスタートした後、受信バッファがいっぱいになるまでの間の待ち時間を大きく短縮できる。原理は簡単で、最初のバッファが埋まるまではフルスピードで送信する。これは、ブロードバンド回線で威力を発揮する。遅い回線の場合は効果がなく、ライブ配信では使えない。

(2)ファスト・スイッチ
2つのビデオ・オーディオクリップ間の切替時間を短くする機能だ。1つめのクリップの再生が終了する前に、次のクリップの配信を始める。この機能を使うと、ライブ配信の間にCMをスムーズに挿入できる。

(3)ファスト・キャッシュ
Webブラウザのキャッシュと同等の機能をWindows Media Playerに搭載したものだ。配信サーバ側でプレーヤーのキャッシュ機能をON/OFFできる。2回目以降の再生はキャッシュから行なえるのでスムーズに再生できる。

(4)Iフレームバッファリング
通常、動画圧縮では圧縮率を高めるために、ストリームの途中から再生できない。再生可能なポイントはキーフレームやIフレームと呼ばれる。従来のライブビデオ配信では、ストリームの途中から受信することになるため、Iフレームが出現するまで映像が出ない。9 seriesの場合、サーバ側で最後のIフレーム以降をキャッシュすることができる。接続したら、このIフレームから配信するため、すぐに映像が出る。およそ半分くらいの待ち時間になる。

(5)オートリコネクト
プレーヤーと配信サーバの接続が途切れた場合に、自動的に再接続する機能だ。ネットワークの混雑や通信障害によりセッションが切れると、従来では再生が途切れる。9 seriesではセッションが切れるとプレーヤーが再接続を試みる。成功すれば続きから見ることができる。キャッシュがうまく動けば、切れたこともわからない。
この機能は強力だ。ロードバランサーと呼ばれる装置を使って2台の配信サーバで負荷を分散している場合、片方のサーバが落ちても、ロードバランサーがもう1台のサーバにユーザーの接続を切り替えられる。ライブ配信時にエンコーダを2台用意すれば、片方が機能しなくなっても、配信サーバはもう1台のエンコーダからデータを取る。

(6)動的な番組編成
ユーザーの嗜好に合わせてCMやビデオクリップを差し替えることが容易になる。従来のWindows Mediaでは、再生リストはプレーヤーが解釈していた。9 seriesでは配信サーバが再生リストファイルに従い配信する。再生リストファイルは、あらかじめファイルとして作成しておくが、その場でダイナミックに作成することもできるのでゲームのようにストーリーを途中で変更する事も可能になる。

(7)パフォーマンス向上
これは前述の通り。配信サーバの能力が大幅に向上した。現在リリースされているベータ版でさえ約1.5倍となる。製品ではさらに向上する見込みだ。

(8)サーバ側キャッシュ
サーバ側でストリームを一時的に蓄積でき、配信サーバを中継サーバとして使えるようになる。例えば営業所の配信サーバを中継サーバとして、本社の配信サーバをメインのサーバとするシステムを構成すれば、営業所サーバ上のキャッシュ領域に存在しないコンテンツのみ、本社サーバから配信、といったシステムが構築できる。

(9)セキュリティ
9 seriesでは、ユーザー認証機能が追加された。このため許可されたユーザーにのみ配信するシステムの構築が容易となる。コンテンツごとに配信権限を設定でき、特定のユーザー向けの配信が容易行なえる。


以上が配信サーバの主な機能強化点となる。その他のWindows Mediaソフトウェアの機能強化点については、発表された時点で改めて説明することにしたい。

いろいろ機能が強化されるが、ユーザーが享受できる最大のメリットは「ファストスタート」により再生スタートまでの時間が迅速になる、という点だ。また「オートリコネクト」により回線状態が悪い時に再生が途切れにくくなる点もメリットが大きい。後者はブロードバンド回線を使っていない場合でも有効だ。

図1 Windows Media次期バージョンである9 series。5つの新機能を搭載している。特に一番左にあるサーバの機能が大きく変わる。今回明らかになったのも、このサーバ概要だ。

図2 「9 series」配信サーバのアーキテクチャ。
太線枠は、それぞれプラグインとして実装される機能。プラグインを差し替えることで容易に機能を拡張できる。

 

(文/ 竹松 昇、(株)朋栄アイ・ビー・イー) ※編集の関係上、雑誌掲載内容と少し異なる個所があります。
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