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WinPCLabs これでわかった!動画の秘密“MPEG”

2002年8月号掲載

第13回 初のMPEG-4対応デコーダ「REALmagic XCARD」登場の意義

世界初のMPEG-4対応MPEGデコーダボードが発売された。米Sigma Designsの「REALmagic XCARD」というPCIボードだ。日本ではバーテックスリンクが販売する。このMPEGデコーダボードは、MPEG-1、MPEG-2、MPEG-4すべてに対応した意欲的な製品だ。

■なぜ今ハードウェアのMPEGデコーダなのか

筆者が初めてMPEGを使ったシステムの開発に携わったのは1993〜94年ころだ。当時はまだCPUが初代Pentiumで、動作も66MHzといった時代。この環境では、ソフトウェアによるMPEG再生はとても無理だった。ちょうどそのころ、MPEG-1が再生できるデコーダボードとして発売されたのがSigma Designsの初代「REALmagic」だった。これは、フルサイズに近い大きさのISAバスボードで、DOSやWindows 3.1環境でMPEG-1ファイルの再生を実現した。

それから10年近くの年月が経過した。この間に、数多くのMPEGデコーダボードが登場し、そして消えていった。現在も継続して新製品を出しているのは、世界中でもSigma Designsだけであろう。

現在のPC環境では、MPEG-1、MPEG-2、MPEG-4ともソフトウェアで十分再生が可能だ。1920×1080ドットのHD(高品位)解像度のMPEG-2ソフトウェア再生はまだかなり厳しいが、通常解像度のMPEGをPC画面で表示するのであれば、ハードウェアによるMPEGデコーダボードは、特に必要ない。ではこのボードはどういった役割を担うのだろうか。

ソフトウェア再生でカバーできないのは、テレビ(NTSC)出力機能だ。PC画面をNTSC信号に変換する回路を搭載したVGAボードは最近多いが、この方式ではMPEG再生時に画質が良くない。MPEG-2の場合、もともとインタレース映像である場合が多いが、PC画面に表示する時点でプログレッシブ映像となり、ビデオ信号に変換するときに、インタレース映像となる。このインタレース映像は元のインタレース映像と同じにはならないため、画質が劣化する。

NTSC出力機能を持つハードウェアデコーダボードを利用すると、この問題は解決する。元のビデオ信号をそのまま復元し、同じビデオ信号にできるためだ。つまり、DVD-Video再生をPCで行い、ホームシアターのプロジェクターを使って楽しむ場合などに、ハードウェアデコーダを使った方が良い結果が期待できる。

REALmagic XCARDは、通常のコンポジットビデオ出力、Sビデオ出力のほか、コンポーネント出力、RGB出力機能を持っている。コンポーネント出力を使うことで、MPEGファイルの持つ画質をなるべくそのままディスプレイに映し出せる。

このほか、XCARDは一般的なソフトウェアエンコーダと同様に、PC(VGA)画面へビデオメモリー経由でMPEGを出力表示する機能も持っている。この場合は、全画面での表示のみとなり、Windowsのウィンドウ内へのMPEG映像を表示することはできない。

■MPEGをベースにした目新しいフォーマット

REALmagic XCARDでは、幅広い種類のMPEGファイルの再生が可能だ。表1に対応しているMPEGファイルの一覧をまとめた。

これらの中で、目新しいフォーマットはSVCD、MPEG-4 MP4、DivXの4種類。

SVCDは、Super Video CDの略で、解像度480×480ドットのMPEG-2ビデオを使っている。通常のCD-ROMにMPEG-2を格納するために策定された規格で、中国で普及している。中国では、VHSビデオが普及しておらず、Video CDが一般的に使われていた。このため、Video CDを高画質化するマーケットニーズがあった。DVDではなくあくまでCDに格納することから、低めの解像度とビットレートが定められた。

MPEG-4 MP4は、MPEG-4規格で決められているMP4と呼ばれるフォーマットだ。通常、MPEG-4ビデオ、MPEG-4オーディオが多重化される。MPEG-4オーディオは、規格で非常に多くの種類のコーデックが決められているが、このXCARDではAACをサポートしている。ISMAと呼ばれるMPEG-4のストリーミング配信を推進する団体がファイル交換用としてMP4の使用を推奨している。

DivXは、MicrosoftのAVIフォーマットを使い、MPEG-4ビデオとMP3オーディオを多重化したものだ。なお、再生可能なMPEG-4ビデオの種類としては、Advanced Simple Profileと呼ばれる種類のファイルの多くが再生可能だ。MPEGファイルの最大解像度は720×576ドットになる。

■新チップ「EM8475」はMPEG-1/2/4をデコード

REALmagic XCARDは、MPEGデコードのために「EM8475」というLSIを搭載している。EM8475は、Sigma Designsが開発したLSIで、1チップでMPEG-1、MPEG-2、MPEG-4のビデオ/オーディオがデコードができる。DVD-Videoにも対応しており、Dolby DigitalやDTSの再生もできる。同社は、冒頭で紹介した初代のMPEG-1デコーダボードのころから、デコーダチップの改良強化を続けてきた。最近では、IPネットワーク対応のSTB(セットトップボックス)に採用される例が多い。なお、6月3日に同社から「EM8500」と呼ばれる新しいLSIが発表されている。EM8500は、EM8475の機能にHD解像度のMPEG-4の再生機能を追加したものだ。

REALmagic XCARDのMPEG-2再生機能ならびにMPEG-4再生機能を評価した。MP4フォーマットのMPEG-4ファイルと、AVIフォーマットのDivX MPEG-4ファイルをテストしている。

MP4フォーマットはISOのMPEG-4規格で定められたファイルフォーマットで$QuickTimeのファイルフォーマットが元になっている。今後、MPEG-4のファイルフォーマットの主流になるといわれており、既にいくつものメーカーから対応製品が出荷されている。アイ・ビー・イーが開発$販売しているMEPG-4リアルタイムエンコーダで作成したMP4ファイルの再生を試したところ、ほとんどのMP4ファイルは正常に再生できた。なお、MP4ファイルを作成したMPEG-4エンコーダのメーカーが異なると、XCARDで開けないこともある。

DivXファイルも、Webで容易に入手できるもの使っていくつか試したが、特に問題はなかった。MP4ファイルもDivXファイルも、640×480ドットといったMPEG-4としては大きめの解像度をサポートしているため、MPEG-2に匹敵するクオリティで映像再生ができる。

XCARDは、あまりCPU能力を必要としない(クロック300MHz以上は必須だが)ので、古くなったPCをMPEG再生機として活用する方法もある。ただし、REALmagic XCARDを使う上での注意点としては$ドライバーがDirectShowを使う構造になっているため、既存のソフトDVDプレイヤー環境とバッティングするので注意したい。

名 称 システム ビデオ オーディオ
DVD-Video MPEG-2 PS MPEG-2 Video Dolby Digital PCM
SVCD MPEG-2 PS MPEG-2 Video MPEG-1 Layer 2
VideoCD MPEG-1 System MPEG-1 Video MPEG-1 Layer 2
MPEG-1 MPEG-1 System MPEG-1 Video MPEG-1 Layer 2
MPEG-2 PS MPEG-2 PS MPEG-2 Video MPEG-1 Layer 2
MPEG-2 TS MPEG-2 TS MPEG-2 Video MPEG-1 Layer 2
MPEG-4 MP4 MPEG-4 MP4 MPEG-4 Video MPEG-4 AAC
DivX AVI MPEG-4 Video MP3

表1 REALmagic XCARDが対応しているMPEGファイルの種類は豊富だ。中でもSVCD、MPEG-4、MP4、DivXに対応している点が新しい。

●EM8475のブロックダイヤグラム

図1 通常のコンポジットビデオ出力、Sビデオ出力のほか、コンポーネント出力、RGB出力機能を持っている。
コンポーネント出力ならば、MPEGファイルの持つ画質の劣化が少ないままCRTに映し出すだすことができる。

 

(文/ 竹松 昇、(株)朋栄アイ・ビー・イー) ※編集の関係上、雑誌掲載内容と少し異なる個所があります。
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