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WinPCLabs これでわかった!動画の秘密“MPEG”

2002年1月号掲載

第6回 MPEG-2のもう1つの規格 MPEG-2 TSとは何なのか?

ソニーから新しいデジタルビデオカメラレコーダ「DCR-IR7」が発売された。このカメラはビデオ・オーディオ信号を「MPEG-2TS」というMPEG-2圧縮で記録している。今回はこのDCR-IP7を通じてMPEG-2 TSの仕組みを解説しよう。

■「DCR-IP7」が採用した新しい記録媒体「MICROMV」

「DCR-IP7」は、世界最小最軽量をうたったビデオカメラレコーダだ。DVテープを採用したビデオカメラレコーダをさらに小さくするために、新しい超小型のビデオテープ「MICROMV」を採用している。
このMICROMVは容積で比べると、DVテープの1/3と非常に小さい。また、テープの幅もDVが6.35mmであるのに対し、MICROMVでは約半分の3.81mmだ。小型化するため、テープ上に記録する方式にMPEG-2を使っている点が新しい。MPEG-2を使うことで、MICROMVのテープ1本に60分の動画が収録可能となっている。

PCとのインターフェースは、メモリースティックのほか、i.LINK(IEEE1394)、USB1.1がある。MPEG-2データの取り込みにはi.LINKを使う。メモリースティックには、MPEG-1のデータ書き出しも可能。メモリースティックに書き込まれるMPEG-1のスペックは以下の通りだ。

システム MPEG-1 System 1.2288Mbps
ビデオ MPEG-1 Video 1.168Mbps
  解像度352×240ドット
オーディオ MPEG-1 Audio Layer2 32Kbps
  サンプリング周波数32KHz
  モノラル

MPEG-2の取り込みには付属ソフトの「MovieShaker」を使う。取り込んだファイルは拡張子が.mmvとなる。この.mmvはMICROMVの略だ。

それでは、PCに取り込まれたMPEG-2ファイル(拡張子.mmv)は、どのような形式のファイルだろうか。ソニーは公開も保証もしていないが、実際に取り込んだファイルを調べてみると、MPEG-2 TSと呼ばれる形式であることが判明した。MPEG-2 TS形式はデジタル放送などで使われているフォーマットだ。2001年11月号でも解説したように、デジタル放送に使われるMPEG-2には、日本、米国、欧州の3方式があるが、どれも基本的にはMPEG-2 TS方式である。TSはTransport Streamの略で、このフォーマットは放送%通信のために工夫されている。

MPEG-2ファイルとしてのスペックを書くと以下のようになる。

システム MPEG-2 TS 12.432Mbps
ビデオ MPEG-2 Video 12Mbps
解像度720 × 480ドット
オーディオ MPEG-1 Audio Layer2 256kbps
   サンプリング周波数48KHz
   ステレオ

DVD-VideoのMPEG-2は、MPEG-2 PS形式を元にしている。PSはProgram Streamの略である。TVをPCで録画するためのボードやデバイスなどでも、普通MPEG-2 PS形式が使われる。

なぜ、MICROMVテープではDVD-Videoと異なり、MPEG-2 TS形式が使われているのだろうか。これは、デジタル放送との関係が考えられる。デジタル放送では、MPEG-2 TS形式が使われている。これをMPEG-2のままテープに録画する場合、MPEG-2 PSに変換するよりMPEG-2 TSのままの方が簡単に済む。MICROMVにデジタル放送の内容がデジタルのまま変換せずに録画できるわけではないが、将来このような用途も想定しているはずだ。実際に、DV規格ではMPEG-2 TSデータの格納方法やIEEE-1394経由の転送方法が規定されている。

■MPEG-2 TS方式は放送・通信に向いた構造

それでは、MPEG-2 TS形式とMPEG-2PS形式はどう違うのだろうか。前述のように、MPEG-2 TS形式は、放送%通信用に考えられている。放送では、1本のストリームに複数のチャンネルを並行して格納することがあり、このような処理が実現しやすくなっている。また、データは188バイト単位に区切られている。これはATM網に乗せやすくするための工夫だ。また、放送でほかのMPEGデータ(例えばコマーシャル)を差し込むことも考慮されている。

一方、MPEG-2 PS形式は、パッケージメディア(CDやDVD)に格納することが前提となっている。このため、ディスクのセクターサイズ(多くの場合2048バイト)単位でデータを区切ることができるようになっている。また、ディスクに格納することから、ランダムアクセス、要は任意の場所へ再生位置をジャンプすることが考慮されている。

MPEG-2 TS形式、MPEG-2 PS形式とも、ビデオとオーディオのデータを多重化、つまり混在させて1つのファイルにまとめるための手法だ。MPEG-2 System規格で規定されており、どちらも中に入っているビデオの圧縮方式、オーディオの圧縮方式は同じものだ。

どちらのMPEG-2形式も器が違うだけで中身は同じと言える。器を移し変える場合、PS→TSもしくはTS→PSの変換は、再伸長や再圧縮なしにできる。別の言い方をすると、同じMPEG-2 Videoでも配布手段に合わせて器を変えることができるということになる。

図1にMPEG-2 TSパケットの基本構造をまとめた。188バイトで1つのパケットとなっている。ヘッダにあるPID情報がチャンネルに該当し、複数格納されている場合に容易に選択できるようになっている。ストリーム中にどんなチャンネルのデータがあるかなどを示すPSI情報と呼ばれるパケットが定期的に挿入される。

■Windows Media Playerでは、再生できない

Windows環境にDVDソフトプレーヤーをインストールすると、一般的にMPEG-2 PS形式ファイルがWindows Media Playerで再生できるようになる。その一方で、Windows 2000やWindows 98/Me環境ではMPEG-2 TSファイルは再生できないことが多い。「DCR-IP7」のMPEG-2 TSファイルもWindows Media Playerの標準的な環境では再生できない。これは、Windows Media Playerの問題ではなく、中で使われているモジュール(DirectShowフィルタ)の問題だ。アイ・ビー・イーで開発したモジュールを使ったところ、再生できることが確認できた。

DCR-IP7のMPEG-2ファイルは付属ソフト「MovieShkaer」のほかにQuickTime Playerでも再生できる。MovieShakerをインストールする時に、QuickTime用の専用コーデックモジュールもインストールされるためだ。ちなみにこのコーデックはMICROMV専用で、他の機器やソフトで作成したMPEG-2ファイルはTS形式、PS形式にかかわらず再生できない。

●図1:MPEG-2 TS形式の基本構造

全体(例)

(文/ 竹松 昇、(株)朋栄アイ・ビー・イー) ※編集の関係上、雑誌掲載内容と少し異なる個所があります。
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