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WinPCLabs これでわかった!動画の秘密“MPEG”

2001年11月号掲載

第4回 DVDからデジタル放送までMPEG-2規格の全体像を知る

最近MPEG-2がいろいろな用途で使われている。DVD-Video、録画可能なDVD、デジタル放送、TV録画機能付きPCなど、すべてMPEG-2を使っている。今回は、これらの関連がどうなっているのかを解き明かすために、MPEG-2の全体像について解説する。

■MPEG委員会が決定するMPEG-2規格とは

MPEG-2規格は、1995年7月に決定された映像圧縮の国際規格だ。この規格は、MPEGと呼ばれる規格策定の委員会によって決められた2番目の規格で、いくつかの部分規格の集合体である。部分規格の主なものは3つあり、MPEG-2システム、MPEG-2ビデオ、MPEG-2オーディオと呼ばれる。MPEG-2システムは、ビデオとオーディオの同期を取りながら多重化して、1本のデータにする方法を規定している。MPEG-2ビデオ,MPEG-2オーディオは、それぞれ名称の通り、ビデオ、オーディオの圧縮方法を規定している。
MPEG委員会は、1988年に設立された映像%音声圧縮の国際的な専門家の集まりだ。当初はCDに1時間分の映像を入れることを目標として、15人の委員でスタートしたが、現在では数百人の大集団となっている。当初の目標はMPEG-1規格となり、ビデオCD規格の主要な要素技術になった。MPEG-1規格は、CDの等速ビットレートに近い1.5Mbpsをターゲットとしている。MPEG-1規格の成功から、もっと高いビットレートでテレビ品質以上の高画質を実現し、通信・放送メディアなど多用途に適用可能な技術を目指すためMPEG-2が策定された。その後、MPEG-4規格と続く。
MPEG-2規格は、従来のテレビ放送からハイビジョンまで、幅広い範囲をカバーしている。また、放送用途だけでなく、DVD-Videoなどの蓄積型メディアにも対応できるように工夫されている。MPEG-2規格は、MPEG-1規格をいろいろな角度から改良することで自由度を広げてある。2Mbps以上のビットレートを前提としており、かなり高いビットレートまでをカバー。放送局で使われるようなHDTVでは100Mbpsを超える場合もある。一方、低いビットレートには向かない。

■特許の扱いの工夫により先端技術が集まる。

MPEG委員会の規格策定の進め方は、次のようなものだ。まず目標を設定する。次に、それに見合った技術を募集する。世界各国からいろいろな技術が提案される。それを専門委員会の場で検討、選択して組み合わせる。ここでポイントになるのは、特許の取り扱いだ。MPEG規格に採用されても、特許は元の会社が保有したままとなる。つまり、MPEG規格を採用した製品を販売をする場合、MPEG規格に使われている特許の特許料は、それぞれの特許を保有する企業に支払う。このため、特許を持っている会社は、自社の技術が採用されるように、一生懸命提案するわけだ。MPEGでは、この方法で最先端の技術を集めて組み合わせることに成功した。
このような複合的な技術は1社では開発し得ないし、1社でまとめることも大変な作業となる。国際規格としてまとめたからこそ、実現したと言える。実際、MPEG-2規格では10社以上が保有する特許技術を使っている。MPEGを使う際に、各社と特許使用の契約をするのは手間が掛かるので、一括して特許をライセンスする会社(MPEGLA)が設立されている。
ここで、このような規格策定で技術を標準化する意味について考えたい。標準化のメリットはいろいろある。一般に分かりやすいのは、メーカー間で互換性を取りやすくなる点だ。ほかにも、上記のように各社の持つ最先端技術を組み合わせて使うことができるのは大きなメリットといえる。もう1つ重要なのは、標準化によって技術が安価になるということだ。標準化された技術はマーケットが大きくなるため、多くの会社がその技術を使ったいろいろな製品を作る。多くの会社がより大きなマーケットに向けて製品を開発するため、製品はどんどん安価になっていく。安価になると、さらにマーケットが広がる、といった形で循環していく。このように標準化技術を採用するメリットは大きい。

■MPEG-2規格が規定するのはフォーマットとデコード

それでは、MPEG規格で何が規定されているのか、もう少し詳しく見てみよう。

まず重要なのが、MPEG規格で規定されていることは、データフォーマットとデコード方法の2点ということだ。規格通りのデータとデコーダがあれば、必ずデコード(再生)できることになる。一方、エンコード(圧縮)の方法は規定されていない。規格通りのデータを出力すれば、どんな方法でエンコードしても良い。つまり、互換性を保つために最小限必要なことのみを定義している。エンコードは各社がノウハウを発揮して競うことができるようになっている。
MPEG-2は、幅広い分野で使えるように目標設定されているため、規格がとても幅広い。規格全体をカバーするデコーダやエンコーダを開発するのは困難で、特にビデオの場合は不可能に近い。このため、ビデオデコーダやビデオエンコーダを開発する際の基準を、プロファイルとレベルという名称で決めている。プロファイル、レベルごとに守るべき規格の部分が異なる。例えば、良く使われるMP@MLはメインプロファイル・メインレベルの略で、DVD-Videoや従来解像度のテレビ放送に適する部分が規定されている。安価な機器ではSP@ML(シンプルプロファイル・メインレベル)しかサポートしていないことがある。シンプルプロファイルは、メインプロファイルと比較すると、回路や計算は簡単だが、同じビットレートでも画質は少し落ちる。(例えば、一部のデジタルカメラのMPEG-1記録はシンプルプロファイル相当。)

■幅広いMPEG-2の規格内容どこを使うかは用途次第

MPEG-2規格が実際にどんな用途で使われているかをにまとめてみた。有名なところではDVDビデオに使われている。また、デジタルテレビ放送にもMPEG-2規格が使われる。表に示すように、多くの用途でMPEG-2規格が使われ出した。ただし、用途によってMPEG-2規格のどの部分を使うのかが異なり、互換性がとれない場合も多い。
例えば、DVD-Videoとデジタル放送の違いを見ると、システム(同期多重化)でDVDがMPEG-2 PS(Program Streamの略)をベースとしているのに対し、デジタル放送ではMPEG-2 TS(Transport Streamの略)を使っている。どちらもMPEG-2システム規格で決められている方式だが、MPEG-2 PSは、主に蓄積メディアで使うことを前提としており、MPEG-2 TSは、主に通信メディアで使うことを前提としている。共通部分が多いため、MPEG-2 PSとMPEG-2 TS間の変換はそれほど難しくないが、変換が必要となる。
オーディオの圧縮方法も異なる。デジタル放送では、国によってオーディオの圧縮方法が異なっている。次回は、PCでMPEG-2を再生するための環境についての解説する。

●表1:MPEG-2を採用した主な標準

  DVD-Video DVD Video Recording デジタルビデオ放送
標準化団体 DVD-Forum DVD-Forum 表3参照
システム MPEG-2 PSがベース MPEG-2 PSがベース
ビデオ MPEG-2ビデオ MPEG-2ビデオ
オーディオ DolbyDigital、PCM
※オプションでMPEG オーディオ
DolbyDigital、PCM
※オプションでMPEG オーディオ

※DVD規格では、Dolby AC-3はDolby Digitalと呼ばれる。

●表2:MPEG-2の使用例

TV録画機能付きPC 当初MPEG-1だったが最近はMPEG-2が主流
放送用素材伝送 放送局間の映像素材伝像に数10MbpsのMPEG-2が使われることがある。特にHDTVの場合。
民間用VTR ソニーからの最近発表されたMICROMV方式。
業務用VTR ソニーの一部の業務用VTRで採用されている。
監視カメラ 道路やダムの監視で使われ始めた。

● 表3:デジタル放送で使われるMPEG-2

  日 本 米 国 欧 州
標準化団体 ARIB ATSC DVB
システム MPEG-2 TS MPEG-2 TS MPEG-2 TS
ビデオ MPEG-2ビデオ MPEG-2ビデオ MPEG-2ビデオ
オーディオ MPEG-2オーディオAAC Dolby AC-3 MPEG-2オーディオ Layer2

 

(文/ 竹松 昇、(株)朋栄アイ・ビー・イー) ※編集の関係上、雑誌掲載内容と少し異なる個所があります。

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