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WinPCLabs これでわかった!動画の秘密“MPEG”

2001年10月号掲載

第3回 ブロードバンドはなぜ速い?ビデオ配信の新技術を知る

ブロードバンド化により、数100k〜数Mbpsで常時接続というインターネット環境を個人でも持つことができるようになった。ビジネスとしての映像配信も普及しつつある。従来の映像配信(ビデオ・ストリーミング)では、回線帯域の問題で数10kbps程度の映像しか流せなかった。160×120ピクセル程度の小さな映像だ。最近は、ブロードバンド化に伴い、300k〜1Mbpsの映像を受信できるようになり、映像のサイズも320×240ピクセルなど、ビデオCD並となってきた。

前回解説したように、ビデオ・ストリーミングの場合、連続してデータを送らねばならない。データがある程度以上途切れると、再生も途切れてしまう。例えば、1Mbpsのビデオ・ストリーミングを考えると、同時接続100ユーザで100Mbps、同時接続1,000ユーザで1Gbpsもの帯域が必要となる。このようビデオ・ストリーミングはかなりの帯域を必要とし、インターネットでスムーズに配信できないことが多い。このために工夫されたのがCDN(Contents Delivery Network)と呼ばれる仕組みだ。また、ブロードバンドではかなり良い画質・音質の映像・音楽を配信できるため、不正コピー対策が、これまでよりも一層重要になる。不正コピー防止には、暗号化、電子透かしなどの方法が使われている。映像・音楽を暗号化して配信し、限定されたユーザでだけ再生できるようにする技術(システム)をDRM(Digital Rights Management)と呼ぶ。

■ビデオ配信を支えるCDN用途で大きく2つに分かれる

CDNは、インターネットバックボーンの負荷を少なくし、クライアント(ユーザ)にデータを途切れずに配信するための仕組み。クライアントとサーバ間の通信距離(この場合は物理的な距離ではなく、ルータの数などネットワーク上での距離)を短くする工夫だ。

ビデオ・ストリーミングは大きく2つのパターンに分けられる。(A)オンデマンド配信−クライアントからの要求に応じて異なるビデオを流す、(B)ライブ配信−ライブ中継など、同じビデオを一斉に配信する、の2つである。これらは、それぞれ、サーバやネットワークに対して必要とするリソースが異なる。オンデマンド配信の場合、クライアントからの要求はランダムに発生し、異なるビデオファイルを配信しなければならないが、同時アクセス数はそれほど多くならない。一方、ライブ配信の場合、コンテンツは同一だが多数のクライアントに対して同時配信することになり、一般に同時アクセス数が非常に多くなる。これらパターンによって、CDNに必要な要素が違ってくる。

オンデマンド配信の場合、クライアントに近いところにキャッシュサーバを置く。ここには、頻繁にアクセスされるビデオデータが蓄積される。キャッシュサーバは、ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)やCATV局などクライアントになるべく近い拠点に数多く設置される。クライアントからビデオ配信サイト(例えば放送局のWebサイト)のサーバ(ここではセンターサーバと呼ぶ)に、配信の要求を出した時に、最寄のキャッシュサーバに振り分けて、実際のビデオデータは、キャッシュサーバから配信する。こうすることで、ビデオデータはインターネットバックボーンを通らずに済み、よりスムーズに配信できる。

どのキャッシュサーバにどうやって振り分けるか、ビデオデータの蓄積をどのタイミングで行うかなどはキャッシュサーバによって様々だ。前回説明したメタファイルの中に記述されるURLを最寄りのキャッシュサーバのアドレスに書き換える、DNS(Domain Name Server)とのやり取りを利用するなどの手法が使われる。キャッシュサーバへの蓄積は、当日のニュースなどアクセスされそうなファイルをあらかじめ送り込んでおく場合や、アクセスがあったファイルを配信すると同時に蓄積しておき、その後同じ要求にはキャッシュを利用する、といった方法がある。

ライブ配信の場合、オンデマンド配信と事情が異なる。同一のデータを同時に数多くのクライアントに届けなければならない。場合によっては、数万クライアントに同時配信することもある。このため、スプリッターサーバと呼ばれるサーバにまずデータを配信する。ここのトラフィックはスプリッターサーバごとに1本分だけでよい。マルチキャストと呼ばれる手法を使えば、センターサーバからスプリッターサーバに対するトラフィックはスプリッターサーバの数によらずに1本で済む。スプリッターサーバは、センターサーバから送られてきたデータを数10〜数100クライアントに対して再配信する。スプリッターサーバに振り分ける手法は、オンデマンド配信の場合と同じだ。CDNは、まだ設置・運用が始まったところで、実験的に運用されている場合も多い。ブロードバンドの普及に伴い、欠かせない仕組みとして、これから広がっていくはずだ。

■著作権を保護するDRM 今後はビデオ配信にも広がる

DRMは、映像・音楽を暗号化して配信することで、限定されたユーザーだけが再生できるようにする仕組みだ。魅力ある映像・音楽をネットワーク経由で手軽に視聴できるようにする。

一般にDRMでは、映像や音楽を暗号化されたファイルで配信し、暗号を解くための鍵情報は、データファイルと別に扱う。再生時にプレイヤーソフトは、暗号を解くための鍵情報をサーバから取得する。サーバとのやり取りの時点で、会員確認や課金処理が行われる。鍵情報は、場合によってはライセンス情報としてPCに蓄積される。

このようなDRMシステムの場合、暗号化されたデータファイルのコピーは自由にできるが、鍵情報がないと再生できない。鍵情報は、PCごとに異なるものを発行することが多い。鍵情報は隠しファイルに格納されるが、これをコピーしてもPCが違えば再生できない。

DRMを使うと、再生できる有効期限や、回数などの条件を付けられる。再生条件はデータファイルや鍵情報に書き込まれる。発売日まで再生できない、試聴用に1回しか再生できない、といった設定も可能だ。ビデオ・ストリーミングに対応したDRMシステムとしてはMicrosoftのWindows Media Rights Management(WMRM)が良く使われているWMRMでは再生条件はデータファイルにも格納される。再生条件で許可されていれば、暗号化データファイルをPDAやメモリカードなどにコピーして再生できる。鍵情報もあわせてコピーするためだ。ただし、PDAから別のPCやメモリカードにコピーしても再生できない。このような1段階のみのコピーは、SDMI(Secure Digital Music Initiative)により規定されているガイドラインに従ったものだ。PCを使いネットワーク経由で音楽ファイルを購入し、その音楽をMP3プレイヤーやPDAにコピーして聴くという使い方を想定している。

このほか、ビデオ・ストリーミングに対応したDRMシステムとして、RealNetworks社からRealSystem Media Commerce Suiteが発表された。このDRMシステムも、基本的な仕組みは上記と同じだ。音楽配信でDRMは良く使われている。映像配信では、まだ一部でしか使われていないが、CDN同様、ブロードバンド映像配信の仕組みとして広がっていくはずだ。

●図1:CDNの仕組み

※赤線がビデオ・データの流れ

●図2:DRMの仕組み

(文/ 竹松 昇、(株)朋栄アイ・ビー・イー) ※編集の関係上、雑誌掲載内容と少し異なる個所があります。

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