私とマルチメディアVIDEO-ITを取り巻く市場と技術MXFラボ

TOP
TOP > MPEGラボ > 第1回

WinPCLabs これでわかった!動画の秘密“MPEG”

2001年8月号掲載

第1回 MPEG-4をめぐる誤解あれこれ

最近、身近になってきたMPEGを中心としたデジタルビデオ技術について、数回に分けて、いろいろな観点から解説してみたい。特に、少し突っ込んでMPEGを使おうとした場合に、いろいろ出てくる「素朴な疑問」を解説したい。最初は、最近話題になっているMPEG-4について。

■MPEGとは

MPEGは、一般に動画圧縮の国際規格のことを指す。本当は、国際規格の中身を議論する委員会の名称なのだが、規格そのものを指すことが多い。正式には規格名はISO/IEC 14496-1といった番号である。つまりMPEGはISOという国際組織の規格なのだ。ISOの日本版はJIS。実はMPEGは、JISでも定められており、JIS規格としても国際規格と同じものが規定されている。(厳密には、今日現在でJIS化されているのはMPEG-1とMPEG-2。MPEG-4も近くJIS化されるはず。)

MPEGとJPEGは名前が似ている。JPEGも、MPEG同様国際規格の中身を議論する委員会の名前である。最初に静止画の圧縮方法としてJPEGが規定され、その後、動画圧縮のMPEGが議論された。MPEG技術の一部にはJPEG技術が使われている。

MPEG-3がないのは有名な話で、MPEG-4の次の5、6も欠番である。MPEG-4の次はMPEG-7となる。ただし、MPEG-7は圧縮方法の規格ではなく、動画(映像)の内容を記述(表現)する方法を定めている。(ちなみに、MPEG-7の次は何故かMPEG-21。)MPEG-1、MPEG-2の話は、回を改めて書くことにしたい。今回は、MPEG-4について説明する。

MPEG-4

MPEG-4は、1999年12月に国際規格として正式に認定された規格である。その前何年にもわたって議論された結果だ。MPEG-4の標準化は、まだ議論が続けられており、いくつかの拡張規格がその後も順に規定されてきている。ただし、主要部分は、既に確定しており、今後変更されることはない。

MPEG-4は、インターネットや携帯電話などを大きな重要なターゲットとして開発された。MPEG-1、MPEG-2などと比較して、低ビットレートに映像・音声を圧縮することを目的としている。低ビットレートでの映像・音声圧縮を実現するため、数多くの新しい考え方が導入された。従来のMPEG-1、MPEG-2の延長線上にある圧縮技術のほか、部品としての映像や図形を合成することで表現する考え方も盛り込まれた。たとえばゲームのキャラクタが、背景画像をバックに動く、といった表現方法だ。

このように、MPEG-4は非常に幅の広い、また巨大な規格である。なんでもアリと言って良いほどだ。たとえば、3次元CGの表現方法の一つであるVRMLが含まれている。また、数種類あるMPEG-4オーディオコーデックの中には、MIDIも含まれている。

■誤解その1:MPEG-4は携帯電話用の圧縮技術である

上記のとおり、MPEG-4は、携帯電話もをターゲットの一つとして策定された規格で、低ビットレートでの画質確保、伝送エラー耐性など、いろいろ工夫されている。ただ、MPEG-4は高いビットレートでも使うことができる。例えば、HDTV解像度のMPEG-4も規格内で実現できる。MPEG-2の機能をすべてカバーしているわけではないがと比較して、より低いビットレートで同等画質が実現でき、さらに自由度が高い点が特徴だ。

従って、当面は携帯電話などでの利用が主体となるが、将来は多様な用途で使われるだろう。

■誤解その2:MPEG-2のほうがMPEG-4より画質が良い

同一ビットレート、同一解像度で評価すると、MPEG-2よりMPEG-4のほうが画質が良いといって良い。もちろん、MPEG-2製品のほうが一般に高いビットレートまでサポートしており、高いビットレートのMPEG-2と低いビットレートのMPEG-4を比較すると、MPEG-2のほうが画質が良い。

■誤解その3:MPEG-4は国際規格なので互換性がある

良くある誤解の一つは、「わが社のMPEG-4製品は国際規格に基づいて作っているので他社製品と互換性がある」という表現だ。もちろん、規格通りであれば互換性があって当然の話なのだが、問題は、規格のどの部分を使うか、という点だ。上記のように、MPEG-4は非常に幅が広く、かつ、いろいろな技術的要素が含まれており、規格全体をカバーするのは、現状では不可能と言って良い。つまり、世の中にあるMPEG-4製品は(今後出てくる製品も含めて)、MPEG-4規格の一部を使っている(サポート一部に対応している)にすぎない。規格の同じ部分を使っていれば良いが、違う部分を使っていれば、当然互換性がとれないわけだ。

現状の多くのMPEG-4製品は、MPEG-4のユニークな点、つまりたとえば要素図形を合成したりする機能を使っていない。従来の、ビデオ・オーディオの圧縮のみをサポートしている。この点では共通部分は多い。特に、このような場合、ビデオの部分は各社かなり共通といって良い。問題は、オーディオの圧縮で、各社各様が現状である。ある会社はAACを使い、ある会社はMP3(これはMPEG-4規格外だが)を使い、といった状況で、互換性があるとは言えない状況である。

もう一つの問題は、システムレイヤーと呼ばれる、ビデオ・オーディオを多重化、つまり交互に並べることでビデオ・オーディオの同期をとりながら再生できるようにする部分の互換性の問題だ。この部分は、既にいろいろな標準規格が先行普及しているため、MPEG-4では規格化されていない点もある。つまり他の規格を利用することが前提になる。用途・目的に合わせて、いくつかの規格を利用(流用)することが許容されており、別の規格を利用していれば、互換性はとれない。

■誤解その4:Windows MediaはMPEG-4である

Windows MediaとMPEG-4の関係も大変わかりにくい点の一つだ。結論から言うと、Windows Mediaはビデオ圧縮にMPEG-4技術を使っていると表現すべきだろう。

マイクロソフト社のWindows Mediaは、複数のビデオコーデック(圧縮技術)、複数のオーディオコーデックを許容している。再生時に目的のコーデックがPC上にないと、インターネットからそのコーデックモジュールを自動ダウンロードする仕掛けで、コーデック間の互換性の問題を回避している。

Windows Mediaのビデオコーデックとしては、ISO準拠のMPEG-4ビデオそのものと、MPEG-4ビデオコーデックを元に、同社が独自に改良したコーデック(いくつかのバージョンがある)が使われている。

Windows Mediaのオーディオコーデックは、Windows Media Audioと呼ばれているもの(いくつかのバージョンがある)が主に使われており、これはMPEG-4オーディオとは別のものだ。

ビデオ・オーディオの多重化のフォーマットは、ASF(Advanced System Format 以前はAdvanced Streeming Formatと呼ばれていた)フォーマットと呼ばれている。ここもMPEG-4規格とは互換性がない点だ。

■誤解その5:MPEG-4はQuickTimeと互換性がある

MPEG-4のファイルフォーマットとして規定されているMP4ファイルフォーマットは、QuickTimeのファイルフォーマットを基本にしている。ファイルフォーマットの基本部分は、ほとんど同じであるといって良い。しかし、中身のデータは当然異なる。

MP4ファイルフォーマットは、後から規格として策定されたものなので、まだサポートしていない製品が多い。MPEG-4ファイルといってもMP4形式でないもののほうが現状は多い。

筆者らが最近評価した製品で、MP4ファイルフォーマットに準拠して作られたと思われるが、規格とどうも異なる部分があり、互換性がないものがあった。MP4ファイルフォーマットの普及はこれからである。

●MPEG-1/-2/-4の主な違い

MPEG-1 MPEG-2 MPEG-4
標準化時期 1992年 1994年 1999年、2000年
目的 CD等の蓄積メディアに1時間の動画を格納 放送・通信など幅広い用途に向けて拡張 マルチメディアオブジェクトを時系列上で表現
主な用途 ビデオCD、カラオケ、VOD DVD-Video、デジタル放送、VOD、放送局内 各種マルチメディア:携帯電話、インターネット、デジタル放送、VOD
主な
ビットレート
1.5Mbps(数100kbps〜1.8Mbps) 2Mbps〜80Mbps 5kbps〜38.4Mbps
主な解像度 352×240、320×240 720(704、640)×480、1920×1080、1920×1152 非常に多様最大1920×1088
主な
フレームレート
24、25、29.97 24、25、29.97、50、60 可変
技術ポイント JPEG(DCT他)、I/P/Bピクチャ(動き予測)、AV同期 インタレース、VBR、TS、4:2:2オブジェクトの合成、合成映像、合成音声

●Windows Mediaの標準コーデック

種別 名称 備考
ビデオ Microsoft MPEG-4 V1 今は使われていない
Microsoft MPEG-4 V2 今は使われていない
Microsoft MPEG-4 V3 PDAなど互換性が必要な場合に使用
Windows Media Video V7 V3を改良したもの
Windows Media Video V8
Windows Media Screen V7 PC画面を圧縮するのに使う
ISO MPEG-4 Video V1 ISO MPEG-4規格互換
オーディオ Windows Media Audio V2
Windows Media Audio V7
Windows Media Audio V8
ACELP 電話音質

 

(文/ 竹松 昇、(株)朋栄アイ・ビー・イー) ※編集の関係上、雑誌掲載内容と少し異なる個所があります。

このテーマを製品化すると Multi Video Processor Pro
Internet Video Processor Publish Edition
IBE MPEG Player
IBE MPEG Player SDK
製品・システム・技術に関するお問い合わせ